いろいろな人に、このまま不入りが続くとルナティックはなくなるともらして
きた。心配させてもっと見に来てもらおうと思ったのだが、入りは変わらず、閉
館の噂だけが広まった。でもルナティックはまだまだ潰れません。「バッファロー’
66」のヒットのおかげで、少なくとも2000年一杯は大丈夫です。それから
先のことは次のヒット作が出るまでわからないけれど。
もちろんお客には入って欲しいけれど、入らないとわかっていても見たい映画
は上映したい。ルナティックの存在理由はその一点にあるのだから。
2000年に上映したい映画! 市川雷蔵、中平康、マキノ雅広、川島雄三、
大島渚
’96年2月、ルナティックで塚本晋也監督の「東京フィスト」を観た私は、
ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。「君は自分の人生を本当に生きてい
るのか? 生きながら死んでいるんじゃないか?」そう問われたような気がした。
なぜそう思ったのか、後日来館された塚本監督ご本人にお会いし、謎がとけた。
監督は自分の映画に深いこだわりを持ち、映画のために全人生を注いでいる人だっ
た。それが温和な表情と語り口から伝わり、彼の精神が作品に脈々と流れている
のだと分かったのだ。私はこんな映画に出会えたことに感謝し、字幕ではなく、
同じ言語、日本語で観られる幸せをつくづく感じた。その年の日本映画は面白かっ
た。是枝監督の「幻の光」、橋口監督の「渚のシンドバット」、北野武の「キッズ
・リターン」、市川準の「トキワ荘の青春」…。日本人の私が今、感じている空気
が見事に描かれていた。洋画にはない感触が、そこには確実にあるのだった。そ
の後、仕事や単なるミーハーなイベント参加などで多くの映画監督に長時間また
は一瞬お会いする機会を得た。大木裕之、石井聰亙、岩井俊二、黒沢清、三池崇
史監督などなど。みんな映画に対するものすごい情熱を心の中で密かに燃やして
おられるようだった。これから、私がかいま見たエピソードなどを紙面を借りて
ご紹介できればと思っております。日本映画は面白い! そう思って下さる方が
ひとりでも増えることを願いつつ…。