『キミタチニアイタイ』の朝生賀子監督にアイタイ!1999.Vol.10

『キミタチニアイタイ』の朝生賀子監督にアイタイ!     山崎はな

前号でも書きましたように、ヤマザキはルナティックを去るコトになりました。本当に お世話になりました。最後の最後になってしまいますが、この度、ムリ言って自主上映 をやらせてもらうので皆さん、ぜひ来て下さい。松山へ来て自分の映画館を持つ、とい う夢は叶ったのですが、かける映画というとやはり東京と同じで、流れて来るのを待つ といった感じだったので自主製作映画はやりたいなあと常日頃、思ってました。本当は 作品を観てもらう前に作家のことにふれるのは掟破りなのですが今回は許して下さい。 ちょっとだけ朝生監督について書きます。

朝生賀子(あさおかこ)監督との出会いは5年前。まだ世に名が知られる前の仙頭(当時 河瀬)直美監督に、仙頭さんが講師を務めていた大阪写真専門学校の生徒として紹介さ れました。つまり、朝生監督は仙頭直美の愛弟子ということになります。朝生監督が学 校の卒業製作として撮った『ぱぁぷりんぷぅ』という短編をその時、観せてもらってそ の構成の巧みさに舌を巻き、こりゃ確かに仙頭さんのDNAが入っとるわい思ったのだけ れど本人は全く意に介さず、「自分は自分」という確固たる意思を持ち、早々に師匠か ら巣立っていったのでした。そしてその後、『ガメラ2』の制作進行や教育ビデオの助 手といったプロの現場も経験し、『キミタチニアイタイ』は満を持してのタイミングで 作られ、朝生監督らしさが十分に生かされてます。劇中、障害を持った男の子が登場す るくだり。ここは、そんじょそこらのおネエちゃんにはとても出来ない演出です。実は 彼女は福祉に強い思いがあり、以前にも障害者の施設で介護の仕事をしていました。そ こでの経験は人間としても作家としても大きく豊かにさせたのでしょう。何より“人の 心の痛みを知っている”、その若さに似合わない、最近では稀有な女の子なんです。そ ういういい所が作品にも反映されていると思います。あとオシの強さもモノを作る人間 にとっては重要なこと。なんと今回、あの蛍雪次郎さんが出演してますからね。なんで も『ガメラ2』の現場で知り合って出演交渉したらしい。ベテラン俳優をモモヒキ姿に させちゃうんだから大したモンだなぁ。そして主演の桜井一紀。彼も仙頭さんの『組 画』の主要スタッフとして活躍していましたが、今は独立し、映像作家として頑張って います。やはり朝生監督との絆は固く、今回いい演技を見せてくれます。当日は監督、 桜井氏、お二人で来られます。今、漠然と「映画を撮りたいなぁ」と思っている人がい たら話しをしてみると面白いと思いますよ! ヘタな商業映画よりもよっぽど勉強にな りますからネ。作品を観て「ナンだ。こんなモンならオイラだって」と思うのも大いに 結構です。肝心なのはそこからなんですから。とにかく今は『アサオカコニアイタ イ!』

    


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