学校の実習で30分の短編映画を作った。学生から選ばれたシナリオで、監督もス
タッフも級友。でも生意気に16ミリフィルムで9日間の撮影である。私は照明を担
当したのだが、実にいろんな発見があった。まず照明スタッフは意外と忙しい。今回
は90%が狭い室内での撮影で、カメラの位置が変わるたびに照明を変えなくてはな
らない。(カメラに照明が映り込む等で)しかも、カメラが回っている間は役者さん
にレフ板を向け、休む間はない。皆初めての本格的な撮影で、技術もなく非情にも時
間だけが、どんどん過ぎていく。
「完璧な映像(無理だけど)にこだわって全部のカットを撮るのを諦める」か、「あ
る程度で妥協してすべてのカットを撮ることのみを目指す」か・・・時間に追われな
がら、この2つの問いが頭の中を駆け巡る。全く次元は違うだろうが、映画監督やス
タッフは常にこの2つの問いと向き合ってるのではないか。プロの現場、特に低予算
の日本映画は撮影機関が異常に短い。望月六郎監督の『弱虫 チンピラ』は2週間、
黒沢清監督の『勝手にしやがれ』シリーズは4週間で2本同時。商業映画で完璧を目
指すのは不可能なのかも知れない。(その過酷な状況で、あれほどの作品を生む両監
督は偉大だ!!)
我が敬愛する塚本晋也監督は「完璧」を目指すがゆえ、“自主映画”にこだわってい
るのだろう。彼は撮影に半年はかけるし、足りないシーンをその後何度も撮影してい
ると聞く。あの構図や照明は、このこだわりによって生み出されているのだ。商業か
自主か、監督の多くは常にこの2つの問いのはざまで苦悩しているのだろう。
さて、ついに塚本さんが、次回作に向けて動き出した。今、ボランティア・スタッフ
を募集している。(ルナティックに詳細掲示中!!)映画の現場はあまりにも過酷。で
もこれほど面白いものはない。それを体験するのに、塚本組はもってこいの現場だと
思う。興味ある方は、GO!!