「ルナティック通信」-2001.Vol.4

About Cinema by助っ人T

 恥ずかしながら、映画好きが嵩じて、昨年秋から東京の映画学校で映画を作る勉強を している。先日、録音技師の大ベテラン・橋本文雄さんが「録音論」の講義に来られ た。橋本さんは大映京都から設立当時の日活に移られ、川島雄三(『幕末太陽伝』も 橋本さんの仕事!)、中平康、神代辰巳、今村昌平、鈴木清順、伊丹十三など錚々た る監督の作品を担当されている。現在も阪本順治監督の『顔』、松岡錠司監督の『ア カシアの道』を手掛けるなど現役バリバリの72歳である。ミーハーな私は思わず川 島雄三監督とのエピソードなど質問してしまったのだが、「お酒が好きな人で、いつ も酔いつぶれて僕が宿まで連れて帰った」などといろいろな話を快く聞かせて下さっ た。その講義で橋本さんが強く言っておられたのは、「映画は映画館で観なければい けない!」ということ。「音」の面では特に重要で、映画の音(セリフや効果音、音 楽)はすべて劇場での上映を想定して音量を調整しているので、ビデオなど過程のテ レビで観ても本当の「音」は決して再現できないというのだ。映画は画(え)が中心 だと思われがちだが、「音」の要素は大きく、音によって演出されている場面も実に 多いそうだ。ビデオで観てつまらない作品も、映画館で観てその音に触れると、全く 印象が変わることが多くある。私もイヴ・モンタンの遺作『IP5』というフランス 映画で、まさにそんな体験をしたことがある。だから、みなさん映画は映画館で観て 下さい。ビデオで観ても、本当にその映画を観たとは言えないのかも知れませんか ら。


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