「ルナティック通信」-2000.Vol.8

日本映画ファン倍増計画 -私が見た愛しい映画人たち-6」 by助っ人T

長谷川和彦監督を知っていますか。数年前、長谷川監督のデビュー作「青春の殺人 者」をリバイバルで観た。若き日の水谷豊と原田美枝子が主演する76年のATG映画 である。中上健次が三面記事の事件をもとに書いた小説「蛇淫」を映画化したもの で、水谷扮する青年が両親を殺し、原田扮する魔性の美少女と逃げるという話だっ た。この両親殺しのシーンには正直、ド肝を抜かれた。あまりにもリアルで、一度観 たら忘れることができないのだ。長谷川監督の名は私の脳裏に焼きついた。そして先 日、大阪で監督の講演会があり、その後の打ち上げにも参加させていただいた。「ゴ ジさん」という愛称の通り、監督は大きくてチャーミングな方だった。「青春の殺人 者」の後、沢田研二主演の「太陽を盗んだ男」を撮り、その後彼は20年以上沈黙を 守っている。企画がつぶれ続けているらしい。2年前に黒沢清監督にお会いしたと き、長谷川監督のことをとても心配しておられたのが印象的だった。自ら「長谷川さ んは師匠」と言われ、その頃長谷川監督復帰作として進められていた「連合赤軍」が 撮影できることを心から願っておられるようだった。また、塚本晋也監督も「太陽を 盗んだ男」のファンらしいし、長谷川脚本、神代辰巳監督の「青春の蹉跌」がフェイ バリットであることを、たびたび公言している。私の予想では今映画界にいる30代後 半から40代の監督の相当数は確実に長谷川監督の影響を受けている。黒沢清、相米慎 二監督は助監督として付いていたからモロだろう。そんな伝説の監督にお会いでき、 さすがに私もほとんど話すことはできなかった。結局「連合赤軍」の企画は流れ、今 監督はインターネットのサイトで企画・脚本を募集している。日本映画史に確実に名 前が残るであろう監督が2本しか映画を撮っていないという現実が悲しい。何か企画 がある方、ぜひトライされてはいかがでしょうか。上記2作品を未見の方はぜひ観て みてください。

(余談ですが監督は室井滋さんの同居人でもある方です。)

(http://www.tcn.zaq.ne.jp/wonderbear/goji01.html)


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