「ルナティック通信」-2000.Vol.4

日本映画ファン倍増計画 -私が見た愛しい映画人たち-番外編」 by助っ人T

早すぎた天才・「中平康レトロスペクティブ」は必見!!

中平康といえば石原裕次郎主演の傑作「狂った果実」の監督として有名だが、今回こ のレトロスペクティヴで彼の作品を観て、本当にびっくりした。まさに天才。職業監 督としてこれだけ多彩な映画、しかもものすごい完成度の作品を残した人が今、ほと んど忘れられていることに疑問を感じずにはいられない。特に「砂の上の植物群」は 絶対観てほしい作品だ。映像のモダンさ、ストーリー展開のうまさ、全編白黒映画で あるにもかかわらず、タイトルに使われたパウル・クレーの絵だけにカラーを使うこ だわりなどこれが35年前の作品とは信じられない素晴らしさなのだ。しかし彼は 「狂った果実」以外評価されることはなかった。今村昌平や大島渚など時代は重い テーマの作品をもてはやし、中平のようなテクニック主義でテンポのいい作品は軽ん じられた。彼は失意のまま酒におぼれていく。中平の娘・まみ氏の著作「ブラック・ シープ 映画監督「中平康」伝」の中で彼は何度も訴える。「原作や素材次第で評価 が決まってしまう今の映画評論は間違っている。評価されるべきはその素材をどう映 像化したかだ」と。30年前の彼の文章だが、今もまったく映画の状況は変わってい ない。(「鉄道員」よかったけど映像作品としてどうなの?…というか…)映画は文 学ではないし、小説のダイジェスト版でもない。そんな簡単なことがわかっていない 映画評論家が今もなんと多いことか。私が最も信頼する映画評論家ミルクマン斉藤氏 が選んだこの8作はバラエティーに富んで本当に素晴らしい。ぜひ多くの人に観ても らいたい作品なのだ。


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