私は熱心な活動家でもないし、左右を問わず、組織とか党派といったものには不信感を持っている。そんなものに骨太な体系だった返答はしようがない。執行委員になったのはいたって個人的な理由である。
私は常々自由に生きたいと思っていた。自由に考え、発言し、行動したいと思っている。しかし現実はどうだろう。執行委員になることすら不自由で、ヒソウな決意が必要な状況である。選択を迫られた時、自分の姿勢を示すとしたら、余地はないと観念するしかない。不合理な状況に対してはノーと言いたい。
確かに経済的にも、人的にも、組織的にも従属関係にある我々個人が発言、行動するには確かに勇気がいる。そんな時、いつも私の弱さを励まし、勇気を与えてくれるのは、サン、デグジェペリの言葉である。
サン、デグジェペリは「星の王子様」であまりにも有名なフランスの作家であり、飛行家である。彼の著作「人間の土地」に次ぎの一節がある。
「老サラリーマンよ、現在の僕の僚友よ、ついに何ものも君を解放してはくれなかったが、それは君の罪ではなかったのだ。きみはかの白蟻たちがするように光明へのあらゆる出口をセメントむやみにふさぐことによって、きみの平和を建設してきた。きみは、自分のブルジョア流の安全感のうちに、自分の習慣のうちに、自分の田舎暮らしの息づまりそうな儀礼のうちに、体を小さくまるめてもぐりこんでしまったのだ。きみは、風に対して、潮に対して、星に対して、このつつましやかな保塁を築いてしまったのだ。きみは人生の大問題などに関心をもとうとはしない。きみは人間としての煩悩を忘れるだけにさえ、大難儀をしてきたのだ。きみは漂流する遊星の住民などではありはしない。きみは答えようのない疑問を自分に向けたりはけっしてしない。要するにきみは、ツールーズの小市民なのだ。何ものも、きみのかたを鷲掴みにしてくれるものはなかったのだ。手遅れとなる以前に、いまでは、君が作られている粘土はかわいていて、固くなってしまっていて、今後、何ものも、最初きみのうちに宿っていたかもしれない、眠れる音楽家を、詩人を、あるいはまた天文学者を、目ざめさせることは、はや絶対にできなくなってしまった。」
「人間に恐ろしいのは未知の事柄だけだ。だが未知も、それに向かって挑みかかるものにとってはすでに未知ではない。」 (新潮文庫版 堀口大学訳)
最後に皆さんにお願いがあります。我々は、県民の福祉のために仕事をしています。しかし、県庁の建物の中には、県民の声はなかなか入ってこないのが現実ではないでしょうか。そこで、我々も県民の一人であることを思い出していただきたい。直接県政を担う我々が県民の代表という責任感をもち、ただ忠誠心だけでなく、素直に意見を表明すれば、多少なりとも県政に県民の声が反映できるのではないでしょうか。
県政が発展するためにはいろんな考え方が必要だと思います。忠誠心だけの組織は動脈硬化を起こし、発展は望めません。
同じ意味で県庁幹部のみなさんも職員の声に静かに耳を傾けていただきたい。