岩堰橋

 岩堰橋が我々の間で話題になったのは、35年程前、坂本九主演の映画「坊ちゃん」のロケ地として報道された時だった。当時の風情を残しているということでロケ地に選ばれたのであろう。調べてみるとこの岩堰橋は大正時代に造られたものだそうだ。

 映画で話題になった当時、中学生だった私は「そういえば、子供の頃時々行った場所だ」といった感想を持った記憶がある。小学校の遠足で行ったような気もするし、家族で道後の奥に山登りをした時立ち寄ったこともあった。そう言えばその頃お弁当を持って家族で近くの野山によく遊びに行ったことを思い出す。幸せな時代だった。当時この橋を渡ると正面にイワゼキヒルという新しい温泉が開業し人気があったのでそこにも行ったことがあるかもしれない。岩堰は当時景勝地として市民に親しまれていた。

 その頃は、右の写真の道を岩堰までバスが通っていたように思う。岩堰まで行く手段は、歩きかちょっと贅沢してバスだった。その後岩堰のずっと上流に奥道後という大きな観光温泉が出来て、道後から新しい道路が延びてこの道は廃れてしまった。そしてイワゼキヒルも奥道後温泉の影響か廃業して長らく廃墟の姿を晒していた。

 現在は、奥道後温泉も盛時の華やかさはなく、イワゼキヒルもスーパーに変わり、さらに新しい道路も出来ている。そんな浮世の変転を見ながら岩堰橋はひっそりと昔の姿をとどめている。ただ写真でもわかるように、橋柱が地中に半分くらい埋もれているような気がする。昔は取り付け道の高さがもっと低く、橋のところに階段があり何段か登って橋を渡るといった具合ではなかったかと思う。


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