ディスタンス


 「ディスタンス」このタイトルに惹きつけられた。距離。遥か遠い道のりを意味しているのだろうか。私は映画の筋を知らないまま、映画館に入った。是枝裕和監督作品は「ワンダフルライフ」しか知らない。
 最初に川の途中まで続いている架け橋が現れる。それは、幾度となく映画の中で現れる道。途中までは歩いていけるけれど、それ以上は近づけない。まるで新興宗教にのめり込み、事件を起こして死んでしまった彼らにはもう近づけないように。生きているものは死んだものの気持ちが掴めないのだ。
 突然、犯罪の実行犯の遺族になった彼らは毎年命日に山に集まる。「死」だけでも予期できないのに、その上、犯罪者の遺族という荷物も背負わなくてはならない。
 「ワンダフルライフ」では死者自身が語るのに対し、本作品では残された家族が語り合う。もう手の届かなくなってしまった人の思いを考えずにはいられない。どうして?どうして私たちは此岸と彼岸に離れてしまったのだろう?死者と生者との距離。残された遺族同士の距離。死者同士の距離。狂気と正気の距離。私とあなたの距離。人はみな距離をもって関わっているのだろう。その距離は縮んだり、伸びたり。
 観た後、映画の登場人物が頭を離れず、気にかかってしょうがない。彼らが自分の心に住んでいる。そんな映画はめったにあるもんじゃない。

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