男 「黙って向き合う二人は何かな? あの他人のような二人は」

女 「夫婦?(married people?)」

O・ヘップバーン主演「いつも二人で」より



 倦怠期を迎えた夫婦が車で旅に出る。夫マークは、旅行中も頭の中は仕事のことばかり。結婚は「うんざり」だと思っている。妻ジョアンナも離婚のことを考え始めている……。「私たちも幸せな時期があった。その頃は今が見えなかった」

 物語は、ジョアンナの回想で進められる。今、彼等が車で走っている道は、「いつも二人」で幾度となく旅行した道である。回想シーンのつなぎがなかなか洒落ている。学生時代、ヒッチハイクをする二人の横を、新婚の二人が友人夫婦と相乗りするワゴンで走り去る。初めて買った中古のオンボロMGを、そして家族旅行する新車を、現在の二人が乗るベンツが追い越して行く。その度に回想シーンも切り替わってゆく。

 時が経つにつれて彼等は裕福になり、乗る車も高級になるのだけれど、「時が過ぎ大人になると、昔の楽しみ方を忘れ」二人の関係は、しだいにとげとげしく、冷たいものになっていく。

 冒頭のセリフは、「美しい夏」を生きるヒッチハイクの二人が、ホテルのレストランに黙って座っている中年のカップルを見て、交わした会話である。そして、その中年のカップルの役を現在の彼等が演じることになる。新婚時代、無理をして泊った思い出のホテルでの二人の会話。ジョアンナが問う。「黙々と食事をする私たちって何かしら」マークが答える。「夫婦(married people)さ」

 結局彼等は、笑顔を取り戻し、ハッピーエンドで物語は終わる。仲直りの訳は…?うまく言えない。ただ、私も十分に「married people」なのだけれど、映画を見ながら自身の若い日々を思いだし、そして見終わった後、アルバムを開いたりしているうちに妙に優しい気持ちになれた。答はそんなところにあるのかもしれない。


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