心に残る映画33「イン・アメリカ 三つの小さな願い事」


 1981年にアイルランドからカナダを経由して、厳しい国境検問を経て、ジョニー(パディ・コンシダイン)と妻のサラ(サマンサ・モートン)そして10歳の娘クリスティ(サラ・ボルジャー)と妹のアリエル(エマ・ボルジャー)は、念願のニューヨークにたどり着く。ジョニーは役者志望でオーディションを受けまくるが採用はされず、夜間のタクシーの運転手となる。サラにも教師の職はなく、ウェイトレスをしながら、ハーレムのぼろアパートを見つけなんとか生計を立てている。
 天使のような二人の娘に囲まれ生活は苦しいが幸せな暮らしに見えるのだが、末弟フランキーの死が彼らに影を落としている。両親はフランキーを失った悲しみを背負い、自責に念に駆られるばかりか、心の奥で相手を責めている。
 ジョニーが感情を爆発させる場面がある。「フランキーを失って以来この世界は幻想だ、二人の子供のために笑顔を作っているが涙も感情もない」。また友人となった同じアパートに住む黒人マテオ(ジャイモン・フンスー)にも当たり散らす。「妻に恋心を抱いているのか?」「いいや、君たちを愛している。怒りにまかせて感情を爆発させる君を、可愛い娘たちを愛している」。
 ジョニーはマテオが不治の病におかされていることを知ります。マテオとの交流で彼らの生活に変化が現れます。「奇跡」とは神の御業ではなく人の思いと行いが起こすのだと思います。  



 無垢な娘たちは親の「演技」や周囲の人たちに支えられ幸せに生きているのか?そうではないのです。特に長女クリスティーが、折に触れて大人びた振る舞いを見せるんですが、その意味が後半明らかにされます。その背伸びが嫌みでなくとても愛おしく思えます。
 フランキーの死からなかなか立ち直れない両親に救いの手を差し伸べるように長女クリスティーが学芸会で歌うイーグルスの「デスペラード」はまさしく天使の美しさで感涙しました。このシーンを見るだけでこの映画を見る価値があります。DVDでは日本語訳が付いてはないのですが、言葉が理解出来なくても伝えたいこと・感動は伝わるんですね。オリジナルのイーグルスの歌よりずっと心打たれました。
 この作品、最後のクレジットで明らかにされるのですが、脚本は、監督のジム・シェリダンが実の娘たち(ナオミ&カーステン・シェリダン)と共同で書いたもの。彼らがアメリカへ移住した際の実体験をベースにしたもの。


学芸会でイーグルスの「デスペラード」を歌う長女クリスティー

最後に、web上で見つけた「デスペラード」の原詩と「キッシー超訳」を採録しておきます
Desperado, why don't you come to your senses?
You been out ridin' fences for so long now
Oh, you're a hard one
I know that you got your reasons
These things that are pleasin' you
Can hurt you somehow

デスペラード(絶望的な・自暴自棄になる男)、目を覚ましなよ
もう長い間フェンスの上に腰掛けてるね
君は頑固者だね
俺は君なりの理由があるのは知っているけど
でもそれが自分自身を傷つけているということでもあるんだよ

Don't you draw the queen of diamonds, boy
She'll beat you if she's able
You know the queen of hearts is always your best bet

ダイヤのクイーンを引くんだって?
君は負けちゃうかもしれないんだよ
本当はハートのクイーンが一番いい手だとわかっているくせに

Now it seems to me, some fine things
Have been laid upon your table
But you only want the ones that you can't get

俺にはいいカードがいくつかテーブルに並んでいるように見えるけど
君は手に入らない物ばかりをねらうんだね

Desperado, oh, you ain't gettin' no younger
Your pain and your hunger, they're drivin' you home
And freedom, oh freedom well, that's just some people talkin'
You're prisoner walking through this world all alone

デスペラードよ、君はもう若くないんだぜ
傷ついた君の心の痛みや乾きは、安らぎを求めるんじゃないのか?
あぁ?自由、自由がほしいから?うん,そう言う奴もいるけどさ
君はまるでこの世をたった1人ぼっちで歩いている囚人だよ

Don't your feet get cold in the winter time?
The sky won't snow and the sun won't shine
It's hard to tell the night time from the day
You're losin' all your highs and lows
Ain't it funny how the feeling goes away?

冬になると足が冷えないか?
空には雪も降らず、太陽も輝かない
夜と昼の区別がつかず
気持ちが固くなって
感情がなくなってしまうって、おかしなことじゃないかい?

Desperado, why don't you come to your senses?
Come down from your fences, open the gate
It may be rainin', but there's a rainbow above you
You better let somebody love you, before it's too late

デスペラードよ、目を覚ましたらどうだ?
君の固くなってしまった気持ちのわだかまりから降りて、ゆっくりゲートを開けてみなよ
雨が降るような出来事もあるかもしれない、でも頭の上には虹だって出てるようによき理解者が現れるよ
誰かが君を愛してくれるよう心を広げな,遅くなる前に

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