心に残る映画27「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」


 友人から借りたDVDに印刷された画像を見て、知ってる俳優が誰もいなくてしばらく見ないで打っちゃっていたのだが、そろそろ返さないといけないと思って見てみると、思いがけず良い作品というかとても好きな作品だった。おすすめです。そして驚いたことに、脇役でスカーレット・ヨハンセンやロバート・ダウニー・Jrそしてなんとダスティン・ホフマンも出演しているのである。脇役ながらそれぞれ良い味出しています。それも見所です。


 有名どころが出ている理由は、監督で主役を演じたジョン・ファヴローは元々役者ではあるのだけど、アイアンマンシリーズの監督で成功した人。そんな関係でビックな俳優たちが友情出演しているのだろうと想像します。その彼が製作・脚本・監督・主演の4役をこなし「やりたいことを好きなようにやった」インディーズ作品だけに色んな制約がなく、「この監督ほんとうに映画作りが好きなんだな」と見ている方も思えてなんか楽しく、ほっこりと安心して見ることが出来て、幸せになれる映画です。
 ストーリーはというと、LAの人気レストランのくシェフ、カール・キャスパー(ジョン・ファヴロー)がある日、料理関係の有名なブロガーのラムジー(オリヴァー・プラット)が店を訪れるというので、新作料理を準備していると、店のオーナー(ダスティン・ホフマン)から、評判の良い定番メニューを出せと強要される。しぶしぶ応じたカールだが、その結果、ラムジーのブログで酷評されてしまう。怒ったカールは、始めたばかりでそのシステムを理解しないままツイッターで怒りを爆発させてしまい炎上。シェフの職を失った挙げ句、さらに感情的に評論家をののしるところを撮られたビデオ映像までネット上に流され大炎上。彼の料理人としての居場所はなくなってしまう。そこまでが前半のストーリーである。


 この作品嫌な奴が出てこない映画なのだが、唯一悪役と言えば、カールに定番メニューを出せと強要するオーナー役のダスティン・ホフマン。でも彼の言い分も納得できるのです。彼の言い分は、「ローリングストーンズのライヴで『サティスファクション』を聞けないのは絶対イヤ」というもの。理にかなっている。そして辛辣な料理評論家であるブロガーのラムジーも実な良い人なんです。これは最後に明らかにされるので内緒にしておいて、けんかの時のキャスパーの捨てゼリフを紹介したい。(金儲けを強要するオーナーにそして一生懸命作った料理に対してなされる心ない批評に)「僕たちがどんなに傷ついているか、考えた事があるのか!」。このセリフ、ジョン・ファヴロー自身の映画界への意見表明のように聞こえて興味深い。
 で後半のストーリーはというと、心配した元妻イネズ(ソフィア・ベルガラ)が彼女の故郷マイアミへ、息子と3人の夏休みの旅に誘い、そこでとびきりうまいキューバサンドに出会ったカールは以前からイネズに提案されていたフードトラック(移動屋台)でキューバサンド屋を開業することを決意。イネズの元夫(ロバート・ダウニー・Jr)からボロトラックを融通してもらい、息子と元のレストランの助手マーティン(ジョン・レグイザモ)と3人で商売開始。フードトラックでマイアミからLAまでのアメリカを横断するロードムービーになり、屋台は、息子のSNSを利用した活躍で行く先々で長蛇の列となります。


 後半でいいなあと思ったのは、料理への情熱を失わないカールの想い、それまでは上手く伝わらなかった息子へのまっすぐな愛情、この二つの想いを理解し成就させたのは、実はちょっとケバイ感じの元妻イネズだという事実。セクシーなんだけど優しい。脳天気のように見えて人情の機微を理解している、理想の女性だなと思いました。仕事に打ち込むあまりギアがかみ合わなくなって離婚した二人。だけど元々誠実で優しくて愛し合っていた二人、ギアがかみ合えばまた一緒に暮らせるはず。


 映画を見ていて、ジョン・ファヴロー監督の世の中や人生を見る視線がほんとうに優しく肯定的だなと思えます。強欲と思えたレストランのオーナーの言い分も納得のセリフで理解できる人物だと描いているし、フードトラックを開業すると決めると元妻の元夫や友人が援助してくれるし、料理評論家も実はカールの応援団だったと最後に明らかにさせられます。彼は実生活でもたぶんそのように生きそのように愛されたのだと思います。そのように生きると目の周りの風景も美しく見えるんだなとこの映画見て思いました。アメリカの田舎や小都市そして自然の風景が美しく描かれているのもこの映画の好きなところです。それと忘れてならないのは、出てくる料理がほんとうに美味しそう。今まで見た料理映画で一番でした。最後は当然大団円のハッピーエンドです。見て良かったと思える作品でした。



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