心に残る映画1「 ミッドナイト・イン・パリ 」


 映画紹介のページです。月末に、月1回のペースで「心に残る映画」を皆さんに紹介していこうと思います。メジャーな作品ではなく、マイナーな作品を中心に、でも心に残る映画を私の個人的趣味で選択してご紹介します。
 ご紹介する映画の第1作目は、ウッディ・アレン監督の2011年制作 「ミッドナイト・イン・パリ」

 ハリウッドの売れっ子脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は、お嬢様育ちの婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)の父親の出張に便乗し、憧れの都パリへやってきた。ギルは娯楽映画の脚本を書くマンネリ仕事に虚しさを覚えており、小説家に転身し、パリに移住する計画を練っていた。が、お嬢様育ちで現実主義のイネズは安定したリッチな生活を譲らない。二人の間には不穏な空気が漂っていた。
 水と油のように見える二人だが、ギルはイネズに魅せられている(ギルはイネズのことを美女でセクシーだと思っている)。そんな2人の前に、イネズの男友達ポール(マイケル・シーン)が登場。イケメンで一見インテリ風、実は俗物なのだが(スノッブという言葉がぴったりの男)、イネズ好みの男。二人はなんか怪しい関係。

 そうして迎えた第1夜。ワインの試飲会に参加した後、なりゆきで、ひとり真夜中のパリを歩いていたギルは、道に迷ってモンターニュ・サント・ジュヌヴィエーヴ通りに迷い込む。物思いに耽っていると時計台が午前0時の鐘を鳴らし、旧式の黄色いプジョーがやってくる。その車に乗り込んだギルは、古めかしい社交クラブで開かれているパーティに参加。そこで出会ったのはスコット・フィッツジェラルド夫妻に、ピアノを弾くコール・ポーター、パーティの主催者ジャン・コクトー。ギルは1920年代のパリに迷い込んだのだ。

 翌晩、ギルはヘミングウェイに連れられてガートルード・スタイン(キャシー・ベイツ)のサロンを訪問。そこでガートルードと絵画論を戦わせていたパブロ・ピカソの愛人アドリアナ(マリオン・コティヤール)と出会い、互いに好意を抱く。さらに次の夜。真夜中のパリをアドリアナと2人で散歩し、夢のようなひと時に浸る。毎晩1920年代のパリに繰り出すギルは、どんどんアドリアナに惹かれてゆく。

 映画の始まりの数分間、パリの名所が心地よい音楽とともにモンタージュされる。しっとりとした色合いで描かれる画面に導入部から惹き込まれた。そして見終わって、もうしばらく見ていたいと幸せな気持ちにさせてくれる素敵でお洒落な映画である。私のすきな映画、この1年でベスト1の映画かな。

 映画の魅力って何だろうと思う。おとぎ話の世界、異空間に連れて行ってくれること、ひと時そんな世界に浸れることかなと思う。そしてもう一つ、知らない世界を数多く知り違った人生を知ること(受け入れること)。そう、映画を見ることによって、私は幸せな気分になれるし、人に優しく寛容になれるきっかけを得る。

 ウッディ・アレン監督はこのおとぎ話のつくりがとても上手い。ギルを、彼の憧れる1920年代に、そしてさらにアドリアナの憧れる1890年代にタイムスリップさせ、歴史上有名な芸術家を次々登場させて、ギルばかりでなく観客も楽しませてくれる。「うんうん、そうだそうだ、そうなの?誰なの?」と。

 彼らとの出会いを背景画に、アドリアナとの出会いと別れのストーリーが真夜中の雨に濡れるパリの街で進行する。このアドリアナとの出会いにより、「人生の真理」にギルは気づく。この真理とは、大切なのは「今をどう生きるか」ということなのだとウッディ・アレンは言っているように思える。ただウッディ・アレンは、この真理を説教臭くなくユーモアと皮肉を織り交ぜスマートに描く。映画を楽しんで幸せな気分とともに、監督はそのことに気づかせてくれる

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