bookcabin2003

２００３年に読んだ本
書名著者名出版社名
コメント

エンデュランス号漂流アルフレッド・ランシング新潮文庫南極の氷の海での１７月にも及ぶ漂流を生き抜いた男たちの記録。
写真家星野道夫さんの愛読書でもあった壮絶な記録である。
読んでいて狩猟民族西洋人の体力にほとほと関心させられる。
私だったら漂流１週間で死んでいただろう。

プラトーノフ作品集プラトーノフ岩波文庫この作品集の中でやはり印象に残るのは「ジャン」である。中央アジアの砂漠を流浪する民。
衣食住だけでなく生きる希望も人としての自覚すら失ってしまっているように見える流浪の民。
彼らと行動を共にするジャンに写った真の幸福とは？

たそがれ清兵衛藤沢周平新潮文庫映画「たそがれ清兵衛」の原作となっている「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」を収録。
映画はこの２作品に加えて「竹光始末」という作品を加えて再構成し山田作品としている。
山田監督が再構成した完結したストーリーも良いけれど、人生の１場面を切り取って描いた
藤沢作品も味わい深い。

壬生義士伝上下浅田次郎文春文庫浅田次郎の作品では「鉄道員」（作品集）を読んで禁じ手を同じ作品集に２回も使っていて、
それはないでしょという感想をもったが「ラブレター」という作品は好きだった。
今回の「壬生義士伝」素直に泣けました。新渡戸稲造の「武士道」を読みたくなった。

山と渓谷田部重治岩波文庫登山がまだ一般に普及していなかった大正時代の山行記。
未踏の山々が日本にもたくさんあった。しかし樵はすでにちゃんとその山で生活していた。

愛媛ゆうゆう山歩き峯本典寛愛媛新聞社最近の山行きを記事にされているので、良いガイドになって重宝してます。
写真を見ると熟年の方の山行記なのだが、私の体力の無さのせいかあの時間では歩けない
ことが多い。ベテラン恐るべし。

坊がつる山小屋日記川上信也海鳥社私の職場の友人の弟さんの作品です。
ホームページに掲載していた坊がつるの写真と山荘での日記を本にしたもの。
プロの写真家であるので写真は勿論素晴らしいのだけれど、文章も楽しめます。

坂の上の雲１～８司馬遼太郎文春文庫日清・日露戦争を時代背景に、正岡子規、秋山好古・真之兄弟の活躍を描いてます。
ただし日露戦争に突入してからは、実態は日露戦記といえる。
戦後の秋山兄弟の後半人生を小説として読みたいと感じたのは私だけか？

風の盆恋歌高橋治新潮文庫３０代前半に読んだ時、こんなことあるの？と思う個所がいくつもあったけど、４９歳の今読み
返してみるとそんなこともあるのだと切実なものを感じる。

極大射程上下スティーブン・ハンター新潮文庫銃へのフェティシズムなしには書けない作品。結末のどんでん返しも一般読者は思いつかない。
非常に映像的でストーリーもテンポが良いので、映画化されるのではと思うのだけれど。

民家と人間の物語犬伏武彦愛媛新聞社犬伏さんの専門分野の仕事の成果を一般読者向けにまとめた本だと思う。
１０年程前仕事関係で講演をお願いしたことがあり一度だけ犬伏さんにお会いしたことがある。
その時「夫遣・武平次」という犬伏さんの書かれた小説のコピーを頂いた。「民家と人間の物語」
にもある梶原家の普請を題材にした小説である。
私の大好きな小説である。犬伏さんは小説家としても一流です。
次回は小説集を出版していただきたいと一ファンとして願ってます。

ハリガネムシ吉村萬壱文芸春秋大腸ポリープの切除のため入院していた病院の本棚にあったので読了。
芥川賞受賞作品。私は好きではないな、それだけの感想。

模倣犯上下巻宮部みゆき小学館実をいうと昨年末に下巻の半分くらいまで読んでいたのだけど、途中で辛くなって放り出していた。
こんな「悪」を創造する宮部さんてどんな人だろうと思っていると、己の心にある悪を見つめていた。
今回、残りを一気に読むことが出来た。案外「あっさり」幕が降りる。
己の悪を見つめる自分が舞台に残ってしまった感じ。

ピクルス藤森直子オンライン藤森書房から豆本で出版されたが、すぐに完売。私は、彼女のホームページからＤＬし読了。
自己紹介によれば「キャバクラ嬢を経て現在はＳＭ嬢」。詳しくは彼女のホームページでどうぞ。
作品に「Fuckin' Blue Film」「綾。ホステス、２２歳」があります。
友人は読み返すたびに涙腺が緩み泣けるそうだが、私は泣けなかった。でもシンプルで好きな作品。

三国志１～１３北方謙三角川春樹事務所北方謙三の作品は、「弔鐘はるかなり」以来、「眠りなき夜」「渇きの街」「逃れの街」「檻」と読み続け
ていた。デビュー当時は北方は１年１作の寡作の人でありそのスタイルを続けたいと語っていた。
その後売れっ子作家となった彼は多作の人となった。ちょっと裏切られた感じがしてその後の歴史
小説は読んでいなかった。でも今回「三国志」を読んで、才能のある人は能力を小出しにするべきで
ないと知った。
さて「三国志」は実を言うと、関羽の死を予感される巻まで読み進んだところで半年ほど中断していた。
関羽が好きでその死を読むに耐えなかったからである。
好きなのは次に馬超、趙雲、張飛、印象に残るのは呂布、曹操。劉備、孔明を忘れてはいけないが。
北方が書けば、三国志もハードボイルドであり、滅びの文学となる。

２００３年に読んだ本
書名	著者名	出版社名	コメント
エンデュランス号漂流	アルフレッド・ランシング	新潮文庫	南極の氷の海での１７月にも及ぶ漂流を生き抜いた男たちの記録。写真家星野道夫さんの愛読書でもあった壮絶な記録である。読んでいて狩猟民族西洋人の体力にほとほと関心させられる。私だったら漂流１週間で死んでいただろう。
プラトーノフ作品集	プラトーノフ	岩波文庫	この作品集の中でやはり印象に残るのは「ジャン」である。中央アジアの砂漠を流浪する民。衣食住だけでなく生きる希望も人としての自覚すら失ってしまっているように見える流浪の民。彼らと行動を共にするジャンに写った真の幸福とは？
たそがれ清兵衛	藤沢周平	新潮文庫	映画「たそがれ清兵衛」の原作となっている「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」を収録。映画はこの２作品に加えて「竹光始末」という作品を加えて再構成し山田作品としている。山田監督が再構成した完結したストーリーも良いけれど、人生の１場面を切り取って描いた藤沢作品も味わい深い。
壬生義士伝上下	浅田次郎	文春文庫	浅田次郎の作品では「鉄道員」（作品集）を読んで禁じ手を同じ作品集に２回も使っていて、それはないでしょという感想をもったが「ラブレター」という作品は好きだった。今回の「壬生義士伝」素直に泣けました。新渡戸稲造の「武士道」を読みたくなった。
山と渓谷	田部重治	岩波文庫	登山がまだ一般に普及していなかった大正時代の山行記。未踏の山々が日本にもたくさんあった。しかし樵はすでにちゃんとその山で生活していた。
愛媛ゆうゆう山歩き	峯本典寛	愛媛新聞社	最近の山行きを記事にされているので、良いガイドになって重宝してます。写真を見ると熟年の方の山行記なのだが、私の体力の無さのせいかあの時間では歩けないことが多い。ベテラン恐るべし。
坊がつる山小屋日記	川上信也	海鳥社	私の職場の友人の弟さんの作品です。ホームページに掲載していた坊がつるの写真と山荘での日記を本にしたもの。プロの写真家であるので写真は勿論素晴らしいのだけれど、文章も楽しめます。
坂の上の雲１～８	司馬遼太郎	文春文庫	日清・日露戦争を時代背景に、正岡子規、秋山好古・真之兄弟の活躍を描いてます。ただし日露戦争に突入してからは、実態は日露戦記といえる。戦後の秋山兄弟の後半人生を小説として読みたいと感じたのは私だけか？
風の盆恋歌	高橋治	新潮文庫	３０代前半に読んだ時、こんなことあるの？と思う個所がいくつもあったけど、４９歳の今読み返してみるとそんなこともあるのだと切実なものを感じる。
極大射程上下	スティーブン・ハンター	新潮文庫	銃へのフェティシズムなしには書けない作品。結末のどんでん返しも一般読者は思いつかない。非常に映像的でストーリーもテンポが良いので、映画化されるのではと思うのだけれど。
民家と人間の物語	犬伏武彦	愛媛新聞社	犬伏さんの専門分野の仕事の成果を一般読者向けにまとめた本だと思う。１０年程前仕事関係で講演をお願いしたことがあり一度だけ犬伏さんにお会いしたことがある。その時「夫遣・武平次」という犬伏さんの書かれた小説のコピーを頂いた。「民家と人間の物語」にもある梶原家の普請を題材にした小説である。私の大好きな小説である。犬伏さんは小説家としても一流です。次回は小説集を出版していただきたいと一ファンとして願ってます。
ハリガネムシ	吉村萬壱	文芸春秋	大腸ポリープの切除のため入院していた病院の本棚にあったので読了。芥川賞受賞作品。私は好きではないな、それだけの感想。
模倣犯上下巻	宮部みゆき	小学館	実をいうと昨年末に下巻の半分くらいまで読んでいたのだけど、途中で辛くなって放り出していた。こんな「悪」を創造する宮部さんてどんな人だろうと思っていると、己の心にある悪を見つめていた。今回、残りを一気に読むことが出来た。案外「あっさり」幕が降りる。己の悪を見つめる自分が舞台に残ってしまった感じ。
ピクルス	藤森直子	オンライン	藤森書房から豆本で出版されたが、すぐに完売。私は、彼女のホームページからＤＬし読了。自己紹介によれば「キャバクラ嬢を経て現在はＳＭ嬢」。詳しくは彼女のホームページでどうぞ。作品に「Fuckin' Blue Film」「綾。ホステス、２２歳」があります。友人は読み返すたびに涙腺が緩み泣けるそうだが、私は泣けなかった。でもシンプルで好きな作品。
三国志１～１３	北方謙三	角川春樹事務所	北方謙三の作品は、「弔鐘はるかなり」以来、「眠りなき夜」「渇きの街」「逃れの街」「檻」と読み続けていた。デビュー当時は北方は１年１作の寡作の人でありそのスタイルを続けたいと語っていた。その後売れっ子作家となった彼は多作の人となった。ちょっと裏切られた感じがしてその後の歴史小説は読んでいなかった。でも今回「三国志」を読んで、才能のある人は能力を小出しにするべきでないと知った。さて「三国志」は実を言うと、関羽の死を予感される巻まで読み進んだところで半年ほど中断していた。関羽が好きでその死を読むに耐えなかったからである。好きなのは次に馬超、趙雲、張飛、印象に残るのは呂布、曹操。劉備、孔明を忘れてはいけないが。北方が書けば、三国志もハードボイルドであり、滅びの文学となる。

BookCabinへ

不器男のホームページへ