2000.10.15

(五条霊戦記)
 石井監督の「五条霊戦記」を見に行く。松山シネマサンシャインでは2番館という小さなスクリーンの劇場での公開。石井監督と親しい訳ではないが、申し訳ない気持ちになる。
 石井監督とは、監督がルナティックに来館した際お会いしたことがある。誠実で真摯な方だった。初期の作品の印象から自信たっぷりの才気ばしった人かと思いきや大違いであった。それ以来、人間的にもファンになった。因みにルナティックに来た翌日は友人の井関君の案内で石鎚山の登ったそうである。
 という訳で、良い作品であってほしいという願いと期待を込めて劇場にむかった。ただ、雑誌等の批評で必ずしも良い評判ばかりではなかったし、前述のように劇場の環境が最悪だったので、すこし心配もしていたのだが。しかしそんな心配はスクリーンに絵が映し出されて5分も経たないうちに吹き飛ばされた。
 すっかり石井ワールドに引き込まれてしまった。物語がエンドレスでいつまでも終わらないでほしいと思った。石井ワールドに魅入られなかった人には冗長に感じたかもしれないストーリー展開も私には十分ついていけたし、逆にもう少しエピソードを追加してほしいという願望があった。
 次第にクライマックス、遮那王と弁慶の死闘への期待が高まっていく。ちょっと期待が高まりすぎたのか、五条大橋での二人の対決シーンはものたりなかった。もう少し超人的なアクションで遊んでもよかったのではと思った。
 



 



 主演の浅野忠信、同じ石井監督の「ユメノ銀河」そして江角マキコの自殺した夫役で出演した「幻の光」で気になる役者として意識していたが、この「五条霊戦記」では圧倒的にオーラを発している。出演シーンもセリフも共演の隆大介の方が多いと思うが存在感は、浅野忠信が格段勝っている。今一番オーラのある役者であろう。
 蛇足であるが、遮那王の影武者で出演していた人、最後まで女優さんと思っていたが、最後に声を聞いてびっくり。男であった。
     


2000.10.21

 


















(人狼)
 よく出来たアニメである。すごく描写がリアルなのでびっくりさせられる。1960年代の風景描写もよく考証ができている。モノトーンに押さえた絵作りはリアルさを際だたせている。そして人間の動きがこれまた実にリアル。しかしである。このリアルさに私は危険を感じた。この絵作りのリアルさに反して物語りの設定は押井守の全くの創造である。虚実ないまぜの映画づくりである。若い世代や海外の人達は、「虚」の方まで日本の現実(歴史)と判断してしまうのではと思った。


「白い花びら」
 映画が始まって、ストーリーがシンプルなので、フィンランドの寓話かなにかが原作かと思ったが、解説を後で読むと、有名な小説が原作で3度も映画化されているらしい。私はアキ・カウリスマキ監督が好きなのだけれど、いつも映画を見ると「貴方いったいどんな人なのだ」と思ってしまう。白い花びらの配役は、足の不自由な老年の男と年の離れた若い妻、そして都会からきたプレイボーイという設定らしいのだが、若い妻はどうみても生活にくたびれた中年のおばさんであり老年の夫とお似合いなのである。プレイボーイの方も、どうみても老年の夫よりふけて見える。このふけたプレイボーイに、君みたいに若くて美しい人が老人の世話をして田舎に埋もれているのはもったいない、というようなセリフをアキ監督は言わせる(サイレントであるが)のである。
 映画の結末は悲劇的なのだけれど、なんていったら良いのだろう、寓話なのでドロドロしていない。そんな映画である。
       
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